音楽と信仰、『さえずり言語起源論』、モテるために、かつて言語は難しかったに関連してメモ。
語の意味に先行する、もしくは別に起源を持つ統語構造について考えれば、当然、意味の起源が問題になります。
『さえずり言語起源論』では、言わば「旋律の共通項」が括り出される形で「語」とレファレンスの連合が生じる、という仮説が示されており、これに対し、むしろ差異こそが意味の起源ではないか、といったことを書きました。
ここで注意しなければならないのは、対象を指示することと「意味」は異なる、ということです。
対象をある音や動作によって指示するだけであれば、多くの動物が行なっています。『さえずり言語起源論』でも取り上げられている『ヒトはいかにして人となったか』でも触れられていますが、敵である鷹が接近した時と、豹が接近した時とで異なる鳴き声を発する猿がいます。それぞれに退避すべき場所が異なるからです。あるいはもっと複雑な指示対象と音声(または別の)表現系を持つ動物というのも、いるでしょう。しかしこれらは、ヒトにおける言語とは異なります。
人間で言えば、これは自然と沸き上がってくる笑い声であるとか、悲鳴や泣き声といったものです。表現系が固定されている、という意味ではありません。固定され「がち」であることも一つの特徴ですが、これらは明示的なレファレンスを持ち、これと強く連合し、なおかつほとんど不随意的に湧き上がるものです。