言語の違いに気付くのは意外と難しい。
 違う言語で語られたものを、同じ言葉だと勘違いしてしまう。
 言葉が通じると思って返した言葉が、まったく別様の機能を果たしてしまう。
 言葉はココロよりも、横にある同じ言語の言葉たちに繋がっている。
 だから言語の違いに敏感になるべきだが、同時にまた、この壁を失念し得るということが、言語の本性にとっては決定的だ。
 壁は曖昧で流動的で、時に感知し難い、この唯一なる言語は、様々な感度の人間たちに憑依している。
 ただ多くの場合、言葉が通じないことより、うっかり誤って通じてしまうことが、悲劇の原因になる。

