エジプトのエナ1で、キリスト教徒の知事が任命されたことに反対するデモが行われていることがニュースになっていますが、たまたまエナ出身の友人がいて、しかも里帰りしたばかりのところだったので、様子を聞いてみました。
報道だと紋切型に宗派間対立として取り上げることが多いですが、この知事の多選を問題視しているむきが強いようで、キリスト教徒だからという問題でもないようです(勿論背景にはそうした感情的なものがあるでしょうが)。
そもそもの問題は、エジプトには知事選挙というものはなく、知事が中央からの任命によっている、ということです。しかも知事というのは、俸給があるのではなく、大統領に気に入られた人物がご褒美として与える職のようです(俸給が本当にないのかはよく分かりませんが、基本的にあの国は帳簿に現れないお金の動きが凄まじいので、名目上の俸給という話でしょう。勿論、実際は大きな利権があります)。要するに封建制度みたいなものです。革命がまがりなりにも達成できたところで、この期に及んで中央の封建領主がまたやって来る、というのに、人々がキレた、という流れでしょう。
しかしそうだとしたら、必要なのは今の知事を辞めさせることではなく、制度そのものを変えることです。実際、今回の知事任命は一時的なもので、秋の大統領選以後制度改革が行われるでしょうし、少なくとも別の知事が任命されなおすくらいはするでしょう。「今のタイミングで騒いでもどうにもならないのに、皆んな分かってないよ」と彼女は嘆いていました。
- 「ケナ」と書かれている場合が多いですし、フスハー読みだとそちらが正しいですが、実際には「エナ」というカタカナが一番近い音で発音されます [↩]