心 その二

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私「彼女に話しかけようか」
・「彼女が話しかけてくるさ」
私「彼女が恋しい、耐えられない」
・「重々しくやれよ、降参しないで」
私「じゃあ何か尋ねるフリをして話しかけるか」
・「ちょっと待てよ、軽いヤツだな。どうするか教えてやる」

 心は良心の敵であって、まるで役に立たないと語ったところだが、少なくともそれが、最も近い友である、ということには触れていなかった。というのも、心が良心の敵であるのは、心が悪を愛するから等ではまったくないのだ。心が良心の敵なのは、心があなたを愛するからだ。あなたにすべてを教えようとし、戦いで勝たせようとし、あなたの望むすべてを手に入れようとし、あなたがお金を稼ぐことを望み、可能であるなら、人々があなたを愛し尊敬し尊ぶことを望むのだ。心はあなたが幸せになることを望んでいる。確かに心は、上に示したずべての試みにおいて、どんなことでもやりかねない。倫理や原則、正しいか間違っているかには目をつむって。忘れてはならないのは、そうするのは心があなたを愛しているからだ。ただあなただけを愛しているのだ。あなたを愛するあまり、世界を洪水に沈めるほどだ。
 狭い街路での一場面を見てみよう。二台の車が向きあって、どちらも下がりたくない。

私「無茶をするな、意固地なヤツだ、僕が下がればそれでいいだろう」
私「下がるだって? あいつがどんな風に見ているか見えないのか?」
私「僕が間違って入ったのかもしれないし」
私「そんなことどうでもいい。大事なのは、ヤツが開き直っているってことさ。戻ったらダメだ。惨めなことだぞ」
私「遅れちまうよ!」
私「ああ、確かに用事があったな」
私「そうだな、戻って、それで終いにしな。それでヤツの脇を通る時、何か怒らせるようなことを言ってやれ」

 あなたの心は、例えば誰かがあなたに侮辱的なことを言うと1、がなりたてます。あなたが馬鹿を見る弱者にされないように2。心は、あなたを走らせますが、あなたが危険に陥ったり問題を起こしそうになると、自分をアッラーにすがる臆病者と考えるよりは、「逃げるのも勇気のうち3」と語りかけます。手詰まりや行き止まりから抜け出させるためなら、心はあなたに、奸計をひねり出す。心はあなたを偽善者とし、嘘をつかせ、生涯出会った中で最も邪悪な人間にもする。心はあなたに「万死に値する」などと言って人をも殺させる。心はあなたに、酷い開き直りを使って、人の権利を踏みにじらせ、「普通だよ、みんなやってることだ、それとも世の中を変えろとでも言うのか?」などと言って。

あなた「家に帰った時に酷い顔をしていたな。奥さんはもう二度と口をきかないに違いない」
あなた「でもあいつも僕が無視したと思って、辛い思いをしてるんだ」
あなた「辛い思い! それはご愁傷様」
あなた「いや、でも僕が始めたことじゃないか」
あなた「もっと威厳を見せろよ。でないと馬鹿を見るぞ」

 心はあなたに、恋人のことで嫉妬させる。また同時に、恋人があなたを好きになるようにさせる。甘い言葉で騙して、魅力的な目付きをさせて、男らしいところを見せつけて。心はあなたの為に何でもする。良いことも悪いことも、全部だ。

私の心「彼女を高い店に誘うんだ。大きな男に見えるようにな」
私「わかった」
私の心「でも言っておくが、気をつけろよ、彼女がお金に目がいって、お金のために利用されないように」
私「わかった」
私の心「でも彼女は今日、あの男を見ていなかったか? 君が気づいてないと思ってるんだ!」
私「じゃあ別れるのか?」
私の心「いや、別れるって何だ。ちょっと待って確かめるんだ。罠を仕掛けて、落ちるかどうか見るんだ。待ってろ、何とかしてやるから」

 心はあなたを守ろうとし、あなたが威厳を保つようにし、鏡に見栄良く映り、そうしたからといって誰にも笑われることのないようにする。心はあなたに言う。「どういう手があるって言うんだ」。またこうも言う。「どうしようもないじゃないか」。
 彼らのせい、彼のせい、彼女のせい、わたしのせいじゃない。
 あなたに何でも言い、どんな言い訳でも口実でも作り出し、間違いはあなた以外の誰にでも押し付け、子供の時は家族のせい、大人になったら状況のせい、どうしようもなかったらシャイターンのせい、地球のせい、太陽のせい、歴史のせい、果ては引き出しのせいにもする。あなた以外なら何でもだ。あなたは月、閣下、自分の手では何もしない。また一方、あなたは可哀想、哀れ、小細工に乏しい、弱い! 次の瞬間には、世界一強い男、歴史上最も賢い女にする。
 この世のすべての男は妻を騙す。心が、妻が彼に相応しくないと言いくるめるのだ。騙されているすべての女は、間違いなく騙されていることを知っているが、夫の見る目がなく、女好きでどうしようもないと思っている。皆さんのうちの誰かだって、過ちを犯すことがある。
 だが、もし過ちを犯したら、心はいつも、なぜ間違えたのか、千ものもっともらしい理由を用意している。
 心は、あなたが間違えても気にしないばかりか、犯した過ちについて良心が責めないようにも求める。心は恋に狂っている。あなたに恋しているのだ。信仰の域まであなたを愛している。
 心は良心の最大の敵であり、あなたの友で、もっとも誠実で忠実で裏切らない者だ。
 おお、我が恋人よ、我が心よ。

  1. リュリッ リッリァリウル・闌€ リケル・隍€ リキリアル閼€ []
  2. ル・・韓ゥ いじめられてパシリにされているようなイメージ []
  3. リァル・ャリアル言 ル・オ リァル・ャリッリケル・ゥ []