『偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する』武田邦彦

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4344980808 偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書)
武田 邦彦
幻冬舎 2008-05

 なぜか続けて「エコを疑う」系の本について書いてしまい、ちょっと飽きてきたので、手短に一番面白かったポイント、レジ袋削減についての章の追記としてあった部分を引用しておきます。

 レジ袋を削減すると、かえって石油の消費量が増えるという著者の指摘に対し、環境省リサイクル推進室橋本室長補佐は、毎日新聞紙上で、「レジ袋削減は、原油使用量削減のため取り組んでいるのではない」という驚くべき内容のコメントを出し、「ペットボトルなどのリサイクルに力を費やしたが、一人あたりの家庭ゴミ排出量はほとんど変わらずゴミの減量効果はなかった。そこで、ゴミ自体を出さないリデュース(発生抑制)への転換の象徴的な存在としてレジ袋に着眼した。ライフスタイル転換のきっかけにしようという意味合い」と発言した(二〇〇八年七月一七日付夕刊二面)。
 これには、環境評論家やNPO団体なども愕然とした。今までの話は何だったのか? ということになる。関係者の話でもレジ袋削減運動の偽善がはっきりしたのだから、あとはできるだけ早く元に戻すことである。

 もう、笑い話です。

 さて、こうした「エコの欺瞞」については大枠で同意するのですが、一方で武田氏には鼻につくところもあります。データ云々といったところではありません。
 例えば、冒頭部分で取り上げられている、「わが社は環境に配慮しています、というのはお金を儲けたがっているだけ」という指摘。企業が「お金を儲け」ようとするのは当然のことで、別段悪事ではありません。「環境に配慮」というところが偽善というのでしょうが、自動車屋さんだって「速くて快適な車」と宣伝するのであって、「お金が欲しいから買ってください」というCMは流しません。国民の多くが本気で「エコ」に洗脳されていることは確かに問題で、是非氏には「啓蒙活動」を続けていただきたいですが、裏表があること自体は世の常であって、「偽善」に対して道義的批判をしても仕方がありません。
 しかも、結語の部分で語られる「では何が本当に環境に良いのか」が、「ものを大切にするこころ」だったりすると、さすがにガッカリしてしまいます。
 科学者の本を読むと、さんざんデータをあげて良いことを言ってきて、最後の部分でいきなり物凄いナイーヴな「こころ」が登場してうんざりさせられることがよくあります。なんだか、理系の秀才がオウムに集まったのを思い出させられます(これもナイーヴな連想ですけれど)。
 「啓蒙」が大事でないとは言いませんが、第一に啓蒙自体の限界があり、第二に人は知っていれば行動を変えられる、というものでもありません。企業が営利に走るのも政治家が嘘を言うのも、それ自体が言わば本性に従っているだけなのですから、やはり誘導する仕掛けがなければどうしようもないでしょう。「科学」も結構ですが、結局は人間社会の仕組みの方を少しずつでも変えていかなければ、「本当のエコ」にも向かわないでしょう。
 個人的には信仰と利子のない世界が素敵だと思っていますが、大多数の日本人にはまったく同意してもらえないでしょう(笑)。ただ、これについては武田氏も指摘していますが、人間はよく間違えるし、完全な安全などというものもないし、すべてをコントロールすることもできません。今のエコについてよく感じるのは、「うまく制御することで本当に環境を守ることができる」という幻想です。たぶん、これ自体が化石燃料の浪費に勝るとも劣らない奢りなのです。
 では全部諦めてしまうのかというと、やはりそういう訳にもいかないでしょうが、「何か残余がある」という感覚は重要です。本当のところ、神様というのはそういうものであって、なぜ日本人の多くがここで急にアレルギー反応を起こすのか少し不思議ですらあります(「ものすごく不思議」ではないし、それはそれで理解できる)。
 だから、「エコの嘘」に対してデータをあげて「科学的」に反論することも大切ですが、どこか「同じ穴の狢」な匂いもあります。これは批判として成立しないので、論として主張することはできないのですが、「道義」を振りかざす者に対して本当に有効な戦略とは、「道義」の嘘を暴くことではなく、「そんなこと言っても、無理です」と小さな声で呟くことです。
 大きな声で言ってはいけません。
 小さな声でつぶやきながら、ペットボトルはなるべく買わない、買ってしまったらしっかり燃やす、これがたぶん、「わたしにもできるアンチ・エセエコ」の第一歩のように思えます。

 繰り返しますが、これは論としては成り立ちません。ささやかテロです。

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