『スーフィーの物語―ダルヴィーシュの伝承』イドリース・シャー 美沢真之助

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4892032719 スーフィーの物語―ダルヴィーシュの伝承 (mind books)
Idries Shah 美沢 真之助
平河出版社 1996-07

 スーフィー(イスラーム神秘主義者)の伝承を集めた一冊。
 よくある説話物語のように、安いメッセージだけは読み取れる、という類ではなく、結局何が言いたいのかわからないようなものも少なくない。重要なのは、メッセージを伝えることではなく、物語によってあるサーキットに修行者が導かれることなのだろう。

 昔、ある男が鳥を捕まえたとき、その鳥がこう話しかけてきた。「わたしは価値のない鳥なので、わたしを捕らえても、あなたには何の利益にもなりませんよ。でも、わたしを自由にしてくれるなら、三つの有益な助言をお教えいたしましょう」
 鳥は、最初の助言を男の手の中で、二番目の助言を木の枝に移ってから、そして三番目の助言を山の頂上に達してから話すと約束した。
 男は鳥の提案を受け入れ、最初の助言を話すように求めた。
 鳥は言った。「何かを失ったとしても、たとえそれが命と同じくらい大切なものだったとしても、けっして後悔してはなりません」
 男は鳥を放した。鳥は木の枝に飛び移り、二番目の助言を語った。
「根拠もなく、常識に反する話を信じるな」
 そういい終えると、鳥はさらに山の頂上へと飛び去りながら、こう言った。
「不運な男よ! わたしは大きな宝石を二個も飲み込んでいたのだ。何も考えずにわたしを殺していれば、それはおまえのものになったのだ」
 男は自分の失ったものの大きさを思って苦悶したが、「せめて最後の助言を聞かせてくれ」と頼んだ。
「最初の二つの助言も理解していないのに、さらに助言を求めるとは、お前は何と言う馬鹿者なのだ」と鳥は言った。「失ったものについて決して後悔するなと、わたしは言ったはずだ。非常識な話は信じるな、ともな。お前はそのどちらの助言も忘れてしまっている。馬鹿げた話を信じ、大切なものを失ったと思い込んで、嘆き悲しんでいる。考えてもみろ。わたしのような小さな鳥の体の中に、大きな宝石が二個も入っているわけがないじゃないか。おまえは愚か者だ。したがって、人間に課せられた通常の制約の中に、とどまらなければならない」



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