『のぼうの城』

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 映画『のぼうの城』を観てきました。
 TBS開局60周年記念作品とのことで、テレビ局がついているというだけでイメージが悪くなったのですが、思っていたよりずっと面白かったです。
 いきなりネタバレですが(といっても、概要はわたし自身知っていたのですが、特にそれで面白みが削がれたとは思いませんでした)、一番素晴らしいのは主人公を演じる野村萬斎さんの田楽踊りです。
 わたしはこの野村萬斎さんという方をまったく存じ上げず、能楽師だということも知らなかったのですが、もう一歩目から素人の踊りではありません。普通の俳優さんをちょっと稽古させてやった演技でもありません。素晴らしい踊りでした。これだけでも見た甲斐がありました。股関節の使い方が非常に美しいです。
 また、わたしは割りと殺陣や擬闘にやかましい面倒くさい観客で、特に武道の心得もなければ身体能力が高いわけでもない若い俳優さんが「強い人」を無理やり演じていると、正直見ていて苦痛なのですが、『のぼうの城』については、そうしたところがあまり目につきませんでした。もちろん、映画ですから荒唐無稽な戦いはあるのですが、コミカルな演出が上手いのか、リアル系の「無理な殺陣」をやっている感じはありません。そもそも武芸者を描いた作品ではないので、そこも良かったのでしょう。劇中で「強い人」は山口智充さん演じる柴崎和泉守くらいですが、このキャラは非常にマンガ的に作られていて、リアルにやろうとして失敗した、という恥ずかしい展開になることがありません。
 殺陣だけでなく、若い俳優が時代劇に出ると、刀が振れまくって見ていられないことが多いですが、その辺もあまり気になりません。実際はそういう場面もあったのでしょうが、全体の演出の中でうまく溶け込んでいるのだと思います。
 佐藤浩市さん演じる正木丹波守が馬に乗って疾走する場面が何度かありますが、これも見事です。あれは本人が演じていらっしゃるのでしょうか。わたしは馬のことは分かりませんが、ロバでも乗りこなすのは大変ですから、あんな隘路を巧みに操って駆けるのは尋常ではないかと思います。一度乗ってみると分かりますが、馬やラクダの背中というのは下から見るよりずっと高く、落馬したら普通に死ねます。昔の人は本当に凄いです。
 時間的に制限のある映画の中に押しこむためか、ストーリー展開的に「もう少し説得力が欲しかった」という場面もありましたが、概ね破綻なく見ていられると思います。
 ものすごいネタバレですが、ラストで主人公が姫を庇わないのも素晴らしかったです。あれはむしろ、結果として彼女を守ったのではないかと思いますが。
 内容的に、映像の多くでCGが使われている筈なのですが、それもあまり嫌味ではなく、いかにもCG、という感じではありません。ミニチュアワークとCGが組み合わされているようですが、わたしは見る目がないのでよく分かりませんでした。結果として嫌味な感じがなかったので成功しているのだと思います。映画冒頭付近で、舞台となる城の俯瞰画面があるのですが、これが非常に美しかったです。
 また、しょうもないことですが、映画随所で犬とニワトリがテキトーに画面を横切っているのがとても良かったです。動物の空気読まない感が実にイイです。犬は一箇所だけ、演出で走っています。ただ、この犬がちょっと綺麗すぎるので、もうちょっと泥んこにして野良犬っぽく演出した方が良かったと思いますが。

 とにかく野村萬斎さんの踊りが素晴らしいので、それだけで説得力が三倍くらいになっています。
 このキャラはリアリティを出すのが非常に難しく、流石にちょっと無理がある、という場面もあったのですが、あの踊りのお陰ですべて許せました。
 あのシーン、もちろん背景は合成でしょうが、足場自体は多分本当に舟の上で撮影している筈です。凄いです。



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