イスラーム現代思想の継承と発展―エジプトの自由主義 (イスラーム信仰叢書) 水谷 周 国書刊行会 2011-04-15 |
アフマド・アミーンとフサイン・アミーンという、エジプトの思想家親子の軌跡をたどった一冊。
「自由主義」という表題は誤解を招きそうですが、穏健派のイスラームくらいに思っておいたら良いです。
ここで言うところの「自由主義」(?)は、本書中でも語られている通り、まとまった思想潮流となりにくいものなので、こうして一冊の本にまとめられることは意義深いでしょう。
ただ、まとまりにくいというのはゆえなきことではなく、要するに所謂「過激派」や、宗教熱心なグループに比べると、イスラームとしての厳密な思想形式があるわけでもなく、読んでいても「まぁそれはもっともだけれども」くらいのふにゃふにゃした印象しか受けません。
各論においては首肯できる点が多いのですが、総論としてどういう軸なのか、その辺のインパクトで、所謂「過激派」とか「原理主義」と言われている人々に比べて、今ひとつキャッチーでない感は否めません。
これは現在の革命後エジプトについても言えることで、所謂イスラーム主義者やサラフィー主義者に比べて、数としては圧倒的に多い筈の「その他大勢」は、言わばサイレントマジョリティとなってしまって、大衆の心をわかりやすく掴むメッセージを発することができないでいます。
個人的には、中田考氏の言っている「総論においては過激派、各論においてはリベラル」な見方というのがしっくりくるのですが、これはこれでややこしくて、一般大衆には理解できないでしょう。結果として、悪い意味でベタな「過激派」が支配することになり「どうもこんな筈じゃなかったんだけどなぁ」というオチになってしまうのです。今後のエジプトがそうなる可能性も否定できません。
どこか一箇所引用して何か書こうかと思ったのですが、どうも掴みどころがなくて絡みにくいです。
絡みにくい、というだけで、値打ちがないわけではないです。
読書をやめたので、あまり字が読めなかったのかもしれません。