本当に正しい人というのは、言ってることの九割ぐらいが間違ってる

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本当に正しい人というのは、言ってることの九割ぐらいが間違ってる。
大方正しいことだけを言う人は、永遠に大方正しいだけで、真理にはたどり着かない。
なぜなら、言葉はすべて上滑りということを覚悟していないからだ。

様式に則り正確に語れば何事かを伝えられる、と考えている人は、大方正しいことしか言えない。
そうした言葉もまた機能するが、言語経済の内側をハムスターの回す車のように回転するだけだ。
つまり、この言葉の真の機能とは、「伝達」ではなく、ホメオスタシスだ。

もちろん、わたしたちはハムスターの車の中にいる。
人生のほとんどは、車をクルクル回すだけだ。
それでいいし、そうでなければいけない。

本当に正しいことばかり言う人は、この世に居場所がない。一緒にいてとても疲れる。
しかしこの人を撃ってはならない。
この人がいなければ、彼または彼女が本当の嘘を語らなければ、ハムスターの車さえ回らなくなる。

言葉はすべて上滑りという覚悟がなければ、ハムスターの車は軸を失い、クルクル回ることができなくなる。
上滑りだからクルクル回るのだ。
回っているということは、回らないところがあるということで、上を滑るということは、滑らないところがあるということだ。
そういう言葉は、端的に言って間違っている。
しかし、この間違いの圧倒的な正しさを分からなければ、ホメオスタシスの執拗さそれ自体によって首を絞められ、回転すら失う。
実際、多くの人々が、回し車の回転の余り、弾き飛ばされて滅んでいく。

大方正しいことを言って平凡に生きようとするなら、恥を知らないといけないのだ。
恥とは、ただ大方正しいだけで何一つ正しくなどなかったということに対する、負い目ということだ。
その負い目を忘れ、厚顔無恥となった者は、車の回転に絡め取られ、身を滅ぼす。

本当に正しい人というのは、言ってることの九割ぐらいが間違ってる。
恥を知る者は、その人を撃ってはならない。
そして、本当に正しいことを言おうとしてはならない。
言おうとして言った言葉は、常に大方正しい以上のものではないのだから。



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