前回に続いて風刺的な詩を披露するエジプトの若者アムル・カターミシュ。これが決勝戦です。
دلعي نورا واسمي عزة
ويقولون بأني مزة
كل بناطيلي ديقة كي أبدو في المشي كوِزة
لو أمشي ويراني شاب ينظرلي بعيون بظة
لكن بعد الثورة لما أمشي أتصورني معزة
لا أسمع بسبس أو مأمأ لا أرى شاب يغمز غمزة
ولهذا أفتخر ببلدي وعرفت هنا معنى العزة
وتيقنت بأن يوما وقريبا سنطهر غزة
كنت وزيرا
أحب حياتي
أسرق دوما ما يحلولي
لكن بعد نجاح الثورة
قد زادت للموت ميولي
ماذا أفعل يا دكتور
أخبرني لا أشوف حلولي
قال الدكتور
كي تهدأ رأسك يا هذا
فلديك حلول مشهورة
اخلق ملعوبا يأخذهم للهَلس
فينسون الصورة
خذ حقنة تعتيم فورا وأعطيهم مطشا للكورة
أم عن ميلك للموت
فالحل الفتن المدسوسة
وعلاجك قرصان صباحا
تأخدهم بعد التشميسة
الأول تدعيم القتلة
والثاني حرق لكنيسة
نحو المستقبل والأفضل سنغير ما في أنفسنا
ولذا ألّفنا وسوية عدة أنشدة وطنية
نشيد الموظفين!
مهما تكون أمالنا في المشمشي
عاهدت ربي لن أرتشي
لن أرتشي لن أرتشي لن أرتشي
نحو المستقبل الأفضل لن نرتشي
والآن مع نشيد المزز
مهما الناس لاموني ع الكحل اللي في عيوني
قررت يا ناس خلاص وأوسع بنطلوني
أوسع بنطلوني أوسع بنطلوني
أنا لن أحلم
سأظل أنادي حتى إن بح الصوت
وسأصنع وطنا يحيا من قلب الموت
بلادي بلادي بلادي لكي حبي وفؤادي
(女性のモノマネで)わたしのあだ名はヌール、名前はアッザ
皆が美人って言うわ
パンツはみんなタイト グラマーに見えるように1
歩けば若者が目を開いてわたしを見るわ
でも革命があってからは 歩くと自分がガリガリなんじゃないかと思う2
冷やかしの声も聞こえなければ3 ウィンクする若者もいない
だからわたしは祖国を誇る ここでわたしは偉大さの意味を知った
確信している いつか近いうちに わたしたちはガザを正常化すると4
(元大臣のモノマネで)わしは大臣だった
人生が好きだった
良いものはいつも掠めとっていた
でも革命が成って以来
死にたい気分になったよ
先生、どうすりゃいいんだ
教えてくれ どうすりゃいいのか分からない
医師曰く
気持ちを落ち着けるには
よく知られた方法があるよ
人を夢中にさせるようなインチキをやるんだ
そうすれば彼らは本当のことを忘れるさ
誤魔化しの注射をすぐ打って サッカーの試合でもくれてやれ5
死にたい気分については
解決するには 対立の捏造だ6
治療法は朝に二粒
日光浴の後に飲むんだ
一つ目は騒乱の幇助
二つめは教会に火をつけるんだ
より良い未来のために、俺たちは自分たちの心のなかにあるものを変える
だから国の唱歌をいくつか作った
職員の歌!
(歌)どんなに希望が不可能に見えても
主に約束する 賄賂を取らないと
賄賂を取らない 賄賂を取らない 賄賂を取らない
より良い未来のために、俺たちは賄賂を取らない
今度は美人の歌だ
(歌)どんなに目の上のアイシャドウを責められても
決めたの ゆったりしたパンツを履くって
ゆったりしたパンツを履く ゆったりしたパンツを履く7
俺は夢見ていたりはしない
呼びかけ続ける 声が枯れようとも
祖国を作る 死んだ魂から蘇る祖国を
祖国よ祖国よ祖国よ 我が愛と心(エジプト国家)
##
最初の節は若い女性視点で、革命後に若者が前向きになり、倫理性も向上し、慎ましくなったことを言っています。「慎ましさ」などというと説教臭くて抑圧的に聞こえるかもしれませんが、個人的に知り合いの冗談ばっかり言ってるエジプトの娘たちもこうした意識を持っていますし、割とポジティヴで明るい気持ちのものです。
二番目の節では、権力が今までやってきたこと、宗派間対立の扇動などについて指摘されています。コプトとムスリムの間の確執は存在はしますが、少なくとも日常的に意識するレベルのものではないし、多くの対立が内務省の自作自演だと言われています。宗派間対立については、日本では(欧米でも)非常に漫画的なステレオタイプで報道されている為、誤解されている方が多いでしょう。
言語については、前回の詩に比べると大分平明で分かりやすいです。最初の節がazzaの音で韻を踏んでいて、面白いです。
最後に流れるのは本物のエジプト国家です。
全然関係ありませんが、エジプトの学校では早朝から耳をつんざくような大音量で国家が詠唱され、生徒代表がクルアーンを読んだりします。学校の真ん前に住んでいたことがあり、「殺す気か」くらいの音量で毎日聞かされていたので、国家も耳にこびりついてしまいました。日本に来て君が代を覚えて変える外国人はまずいないと思いますが・・。