エジプトの今後を考えると、やっぱり軍がキモです。
わたしは別段政治の専門家でも何でもありませんが、誰が見ても軍次第でしょう。
今回の革命は52年のクーデターのようなものではありませんでしたが1、それでも軍の協力がなければ革命は成し得なかったでしょう。しかも軍は、かなりクレバーに振舞っています。民衆を敵に回したら、軍と言えど力づくでは動けないし、そうなれば大衆だけでなく欧米諸国が黙っていないだろう、というくらい分かっているのです。
一般市民の間でも軍の支持はあつく、実際、現状は軍政のようなものですが、当分の間軍事政権とするか、少なくとも次の大統領は軍人出身にすべきだ、という人も少なくありません。今までの大統領も全部軍出身だったわけですから、別に突飛な考えではありません。革命後、心理的な勢いとしては以前よりずっと良くなりつつも、具体的な改革は一朝一夕で終わるものではないですし、一方で混乱に乗じて悪さを働く連中がいるため、「強い」支配を望む声が多いのです。おそらく軍はそこまで勘案して、市民に評判の悪い警察機構を骨抜きにしたまま、適度にアウトローに暴れさせておいているのではないでしょうか。
軍との関係ということでは、気になるのは同胞団です。軍と同胞団は思想的には天敵です。両者ともそれを分かっていて、かつ相手を潰すわけにもいかない状況なので、同胞団は穏健路線をアピールし、軍も同胞団を容認(否定してしまったら「ムバーラクと一緒やないか」と猛反発を受ける)せざるを得ません。現在、選挙を憲法改正後に延期しよう、という流れができているらしいですが、これも軍がさりげなく同胞団の影響力が過大になるのを抑えるために動いているのではないでしょうか。市民派勢力がまとまりを得ていない状況では、選挙が早ければ早いほど同胞団が優位にたちます。はたから見ても、すぐに選挙をやって得る同胞団の票は、実際の支持率に対して過大になってしまうのでは、と思われます。
一方でムバーラクをボコボコにして欲しくないサウジから、様々なルートで「穏便に」「うまくやってくれたら援助あげるよ」モーションがかかりまくっているに決まっているのですが、これもうまくいなしています。甘い誘いに乗ったら、今度は大衆が黙っていませんし、今までのところ、色々な方面の圧力に対し、上手いことバランスをとっているように見えます。
次期大統領が誰になるのか分かりませんが、軍人出身でないにしても、軍とはかなり緊密な協力関係を保っていかざるを得ない、保てる人でないと困る、というのは言えるかと思います。実際、軍は割と上手く振舞っているのですし、「軍事政権」だとしてもミャンマーのそれのようには成り得ませんから、エジプトにとって今はそれが一番マシな選択肢なのでは、と個人的には眺めています。