顕名ネットだか顕名主義vs匿名主義みたいな話は随分前からガタガタやっていて、一定周期毎にネタにされているかと思います。顕名の人が匿名の人を卑怯者呼ばわりするのは、それはそれで分かる気もするのですが、学者やらジャーナリストやら芸能人やらといった連中と、郵便配達夫やガソリンスタンド店員を一緒にされても困ります。
前者の人々は顕名性そのもので商売している、つまり名前や顔を売ることで稼いでいるんですから、それは顕名にするでしょう。顕名にも匿名にもメリット・デメリットがありますが、彼らはメリットをより多く享受できる立場にいるのです(勿論彼らなりのデメリットもあろう)。
逆に後者の人々は、顕名ネットであまり得をしないばかりでなく、そもそもある種の匿名性によって食べています。勿論職場では名を明かしているに決まっていますが、こうした商売というのは、「彼または彼女であること」を正面に出しすぎてはいけません。基本的には没個性的であることが要求されますし、組織だって「属人的ではイカン」みたいなことが語られるわけでしょう。属人的ではないけど人を使う、というなら、人であって人でないものを使うしかないし、賃金奴隷とはそういうことです。世の中で求められているのは、そういう「人でなし」な訳ですから、今更人間みたいに名前なんか要求されても困る。
顕名ネット主義者が匿名者を卑怯者呼ばわりするのは、殉教攻撃や非正規軍による撹乱戦術を卑劣なテロと呼ぶ大統領閣下どもと一緒で、そいつらに都合の良いルールの敷かれているリングに上がらない者にキーキー喚いているだけの話です。卑怯というなら、それはもう卑怯ですよ。誰が米帝に正面から宣戦布告しますか。大体、こちらは彼らが「戦争」の単位と考えるようなモノ(国家、あるいは一人一個の人権を実装した個人)ではないのですから。どんどん卑怯な手を使ってヤツらの権益を破壊しなければなりません。
余談ですが、翻訳というのも何だか上の人種の違いみたいなものが絡みます。翻訳というのは、特許とか医療とかの限られた分野を除けば、まぁあんまり儲かる商売ではないし、まして人文系ともなれば、ハリーポッターでも訳さない限りは、食べていける性質のものではないでしょう。それでも売れそうにない本が出るのは、大学から生活給を毟り取ることに成功した人々が、名誉のために訳すからです。翻訳そのものがお金にならなくても、名前を売ることが巡り巡って彼らには商売になる。出版社だって多少はそれらしい肩書きを持っている人が訳した方が有り難いでしょう。というか、そうでなければまず相手にされません。
要するに彼らは景品交換所を確保しているのであって、そうでない人間がセブンスターやら洗剤ばかり何ダースも貰ってきても、ちっとも値打ちなどないのです。換金できないのですから。それくらいなら、匿名でバラまいた方がマシというものです。多少なりとも攻撃にはなるし、一ミリくらいはクソ知的所有権を踏みにじれるでしょう。ユナボマーでもやった方が合理的だと思いますけれど。
いや、わたしはちゃんとセブンスター貰いますけどね。タバコ代くらいの印税でも貰いますよ。換金しないで吸いますから。