Categories: 書評

『俺は生ガンダム』羽生生純

俺は生ガンダム (角川コミックス・エース 295-1)
羽生生 純
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-08-26

 久しぶりに漫画を買いました。羽生生純の『俺は生ガンダム』です。
 一部で話題になっていましたが、生身の身体で(アムロではなく)ガンダムになってしまおう、というすごい物語。
 ではガンダムファン向けのものなのかというと、ガンダムを知っていれば尚良いでしょうが、必ずしもガンダム好き向けではないのではないでしょうか。実際、ガンダムファンの中には読んでも全然面白くなかった、絵柄的に受け付けない、という人が沢山いらしたのではないかと思います。
 これは羽生生純(「はにゅにゅう じゅん」と読む)さんの作品なのです。羽生生純と言えば『恋の門』。

恋の門 (1) (ビームコミックス)
羽生生 純
エンターブレイン 2000-04

 自主映画屋崩れが描く偏執的芸術漫画家の恋愛漫画。それはそれは頭のおかしい作品です。こういう暑苦しい暴走の仕方が好きな人間にはたまらない作家さんです。
 その羽生生純がガンダムをネタにするのですから、普通のガンダムファンが素直に受け止められるものになる筈がありません。どちらかというと、羽生生純ファン、またしりあがり寿ファンなどに薦めたいです。
 問題は羽生生純ファンでかつファーストガンダムをある程度知っている、という論理積がコアすぎる、ということでしょうか。わたしはたまたま割とファーストガンダムが好きなのですが、全然見ていない人にとって果たして面白いのかどうかは未知数です。
 羽生生純さんご自身、多分ガンダムは好きなのでしょうね。全然好きじゃなかったらちょっと描けない作品でしょう。でも、普通のガンダム好きはこういう表現をしない。こういう形でしかガンダムへの愛を表現できない。その辺が『恋の門』を彷彿させます。こんな偏った愛情表現しか持たない人が、漫画というフィールドを得て一定の評価と収入を手にすることができて、本当に良かったです。スブハーナッラー。
 『恋の門』の頃に比べてこなれたなぁ、と思ったのは、ツッコミがちゃんと機能していることです。こういう狂った才能の持ち主が、商業ベースの端っこに引っかかれるかどうかは、ツッコミの使い方にかかっています。本当はツッコミなんて要らないのです。宇宙はボケ逃げているのですから。でもツッコミがないと、やっぱりなかなか大衆には届かない。宇宙のメッセージをシモジモの民に伝えるのがツッコミです。それを上手く使えないと、トチ狂った才能の持ち主は不幸になると思います。
 この辺、うすた京介さんの影響とかもあったのかなぁ、と勘ぐりますが、よく分かりません。
 とにかく濃いニッチな作品ですが、わたしは大いに評価します。映像で似たようなネタをやったことがあったせいもあり、嫉妬するくらいです。
 ちなみに、『恋の門』のハンディ版全6巻セットが安く出品されていました

kharuuf

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kharuuf
Tags: 漫画

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