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敵討ち特集

 突然ですが、敵討ちに関してお題を頂戴してしまったので、関連ありそうな聖句を拾ってみました。集団的敵討ちが前提とのことでしたが、なんとなく関係ありそうなものをぼんやりと集めました。
 念のためですが、わたしは正規の法学的教育等をまったく受けていない一介の信徒で、研究者でもなく、かつ性格も大雑把なので、言っていることは大変怪しいです。テーマがテーマなだけに、非ムスリムの方は特に読まれない方が良いと思います。ムスリムにしても、こうした箇所を文脈を無視して取り出すと大変危険なので、参考程度にながめてやってください。あくまで趣味的に探してみた、という程度のお話です。ちゃんと知りたい方は法学的知識のある先生に尋ねて下さい。

 まず、お題を頂戴した際に例示された箇所がここ。敵討ちというか、集団的報復です。

22-39.戦いをし向ける者に対し(戦闘を)許される。それはかれらが悪を行うためである。アッラーは、かれら(信者)を力強く援助なされる。
أُذِنَ لِلَّذِينَ يُقَاتَلُونَ بِأَنَّهُمْ ظُلِمُوا وَإِنَّ اللَّهَ عَلَى نَصْرِهِمْ لَقَدِيرٌ

 敵討ちから外れそうですが、以下の二アーヤは殺害には関係あります。ただし、こうした「アッラーの敵に対する戦い」に触れた箇所は非常に多く、どれも「敵討ち」という話題からは外れているように思えます。

5-32.そのことのためにわれはイスラエルの子孫に対し、掟を定めた。人を殺した者、地上で悪を働いたという理由もなく人を殺す者は、全人類を殺したのと同じである。人の生命を救う者は、全人類の生命を救ったのと同じである(と定めた)。そしてわが使徒たちは、かれらに明証を齎した。だが、なおかれらの多くは、その後も地上において、非道な行いをしている。
مِنْ أَجْلِ ذَلِكَ كَتَبْنَا عَلَى بَنِي إِسْرَائِيلَ أَنَّهُ مَن قَتَلَ نَفْسًا بِغَيْرِ نَفْسٍ أَوْ فَسَادٍ فِي الأَرْضِ فَكَأَنَّمَا قَتَلَ النَّاسَ جَمِيعًا وَمَنْ أَحْيَاهَا فَكَأَنَّمَا أَحْيَا النَّاسَ جَمِيعًا وَلَقَدْ جَاءتْهُمْ رُسُلُنَا بِالبَيِّنَاتِ ثُمَّ إِنَّ كَثِيراً مِّنْهُم بَعْدَ ذَلِكَ فِي الأَرْضِ لَمُسْرِفُونَ

5-33.アッラーとその使徒に対して戦い、または地上を攪乱して歩く者の応報は、殺されるか、または十字架につけられるか、あるいは手足を互い違いに切断されるか、または国土から追放される外はない。これらはかれらにとっては現世での屈辱であり、更に来世において厳しい懲罰がある。
إِنَّمَا جَزَاء الَّذِينَ يُحَارِبُونَ اللّهَ وَرَسُولَهُ وَيَسْعَوْنَ فِي الأَرْضِ فَسَادًا أَن يُقَتَّلُواْ أَوْ يُصَلَّبُواْ أَوْ تُقَطَّعَ أَيْدِيهِمْ وَأَرْجُلُهُم مِّنْ خِلافٍ أَوْ يُنفَوْاْ مِنَ الأَرْضِ ذَلِكَ لَهُمْ خِزْيٌ فِي الدُّنْيَا وَلَهُمْ فِي الآخِرَةِ عَذَابٌ عَظِيمٌ

 次も敵討ちというより、イスラームの敵との戦い。ここだけ抜き書きすると非常に物騒な内容なので、文脈から切り離して理解しないで下さい。こういう箇所を抜き出して利用するのは所謂テロリストの得意とするところですが。

2-191.かれらに会えば、何処でもこれを殺しなさい。あなたがたを追放したところから、かれらを追放しなさい。本当に迫害は殺害より、もっと悪い。だが聖なるマスジドの近くでは、かれらが戦わない限り戦ってはならない。もし戦うならばこれを殺しなさい。これは不信心者ヘの応報である。
وَاقْتُلُوهُمْ حَيْثُ ثَقِفْتُمُوهُمْ وَأَخْرِجُوهُم مِّنْ حَيْثُ أَخْرَجُوكُمْ وَالْفِتْنَةُ أَشَدُّ مِنَ الْقَتْلِ وَلاَ تُقَاتِلُوهُمْ عِندَ الْمَسْجِدِ الْحَرَامِ حَتَّى يُقَاتِلُوكُمْ فِيهِ فَإِن قَاتَلُوكُمْ فَاقْتُلُوهُمْ كَذَلِكَ جَزَاء الْكَافِرِينَ

 これも敵討ちというよりアッラーの敵ですねぇ。

4-89.かれらは自分が無信仰なように、あなたがたも無信仰になり、(かれらの)同類になることを望む。だからかれらがアッラーの道に移って来るまでは、かれらの中から(親しい)友を得てはならない。もしかれらが背をむけるならば、ところかまわずかれらを捕え、見付け次第かれらを殺せ。かれらの中から決して友や援助者を得てはならない。
وَدُّواْ لَوْ تَكْفُرُونَ كَمَا كَفَرُواْ فَتَكُونُونَ سَوَاء فَلاَ تَتَّخِذُواْ مِنْهُمْ أَوْلِيَاء حَتَّىَ يُهَاجِرُواْ فِي سَبِيلِ اللّهِ فَإِن تَوَلَّوْاْ فَخُذُوهُمْ وَاقْتُلُوهُمْ حَيْثُ وَجَدتَّمُوهُمْ وَلاَ تَتَّخِذُواْ مِنْهُمْ وَلِيًّا وَلاَ نَصِيرًا

 これも敵討ちではなく戦争についてですが、和平に応じないなら殺せ、という内容なので、ちょっと集団的敵討ちに近い気もします。

4-91.外のある者は、あなたがたから安全を望み、また、自分の人びとからも安全であり度いと望むのを、あなたがたは見るであろう。かれらは試みにあう度に、それら(の誘惑)に陥り転落する。それでかれらがもし退かず、あなたがたに和平も求めず、また手を納めないなら、ところかまわずかれらを捕え、見つけ次第かれらを殺せ。これらの者に対しては、われはあなたがたに、明白な権能を授ける。
سَتَجِدُونَ آخَرِينَ يُرِيدُونَ أَن يَأْمَنُوكُمْ وَيَأْمَنُواْ قَوْمَهُمْ كُلَّ مَا رُدُّوَاْ إِلَى الْفِتْنِةِ أُرْكِسُواْ فِيِهَا فَإِن لَّمْ يَعْتَزِلُوكُمْ وَيُلْقُواْ إِلَيْكُمُ السَّلَمَ وَيَكُفُّوَاْ أَيْدِيَهُمْ فَخُذُوهُمْ وَاقْتُلُوهُمْ حَيْثُ ثِقِفْتُمُوهُمْ وَأُوْلَـئِكُمْ جَعَلْنَا لَكُمْ عَلَيْهِمْ سُلْطَانًا مُّبِينًا

 これもアッラーの敵との戦い。ただし向こうが止めたらこっちも止めろ、という有名な下り。

8-39.だから、迫害と奸計がなくなるまで、また(かれらの)教えがすべてアッラーを示すまで、かれらと戦え。だがかれらがもし(敵対を)止めるならば、本当にアッラーは、かれらの行うことを御存知であられる。
وَقَاتِلُوهُمْ حَتَّى لاَ تَكُونَ فِتْنَةٌ وَيَكُونَ الدِّينُ كُلُّهُ لِلّه فَإِنِ انتَهَوْاْ فَإِنَّ اللّهَ بِمَا يَعْمَلُونَ بَصِيرٌ

 これもアッラーの敵との戦いですが、物騒な文言としては有名なところです。こういうところだけ拾って読んではいけませんが、本当のところは、こういう内容もある、というところが聖典の重要なところです。その話は長くなるので割愛。

9-5.聖月が過ぎたならば、多神教徒を見付け次第殺し、またはこれを捕虜にし、拘禁し、また凡ての計略(を準備して)これを待ち伏せよ。だがかれらが悔悟して、礼拝の務めを守り、定めの喜捨をするならば、かれらのために道を開け。本当にアッラーは寛容にして慈悲深い方であられる。
فَإِذَا انسَلَخَ الأَشْهُرُ الْحُرُمُ فَاقْتُلُواْ الْمُشْرِكِينَ حَيْثُ وَجَدتُّمُوهُمْ وَخُذُوهُمْ وَاحْصُرُوهُمْ وَاقْعُدُواْ لَهُمْ كُلَّ مَرْصَدٍ فَإِن تَابُواْ وَأَقَامُواْ الصَّلاَةَ وَآتَوُاْ الزَّكَاةَ فَخَلُّواْ سَبِيلَهُمْ إِنَّ اللّهَ غَفُورٌ رَّحِيمٌ

 敵討ちではなく「約束破ったら殺せ」系です。

9-12.だがかれらがもし誓約した後にそれを破り、あなたがたの教えを罵るならば、不信者の首長たちと戦え。本当にかれらには誓いはないのである。恐らくかれらは止めるであろう。
وَإِن نَّكَثُواْ أَيْمَانَهُم مِّن بَعْدِ عَهْدِهِمْ وَطَعَنُواْ فِي دِينِكُمْ فَقَاتِلُواْ أَئِمَّةَ الْكُفْرِ إِنَّهُمْ لاَ أَيْمَانَ لَهُمْ لَعَلَّهُمْ يَنتَهُونَ

 以下二アーヤはムスリム同士の殺人について。故意の場合も、アッラーにより報いを受けることは書いてありますが、現世的な報復については言及なし。

4-92.信者は信者を殺害してはならない。過失の場合は別であるにしても。過失で信者を殺した者は、1名の信者の奴隷を解放し、且つ(被害者の)家族に対し血の代償を支払え、だがかれらが見逃す場合は別である。もし被害者があなたがたと敵対関係にある民に属し、信者である場合は、1名の信者の奴隷を解放すればよい。またもしかれが、あなたがたと同盟している民に属する場合は、その家族に血の代償を支払ったうえ、1名の信者の奴隷を解放しなければならない。資力のない者は、アッラーからの罪の償いに続けて2ケ月間の斎戒をしなさい。アッラーは全知にして英明であられる。
وَمَا كَانَ لِمُؤْمِنٍ أَن يَقْتُلَ مُؤْمِنًا إِلاَّ خَطَئًا وَمَن قَتَلَ مُؤْمِنًا خَطَئًا فَتَحْرِيرُ رَقَبَةٍ مُّؤْمِنَةٍ وَدِيَةٌ مُّسَلَّمَةٌ إِلَى أَهْلِهِ إِلاَّ أَن يَصَّدَّقُواْ فَإِن كَانَ مِن قَوْمٍ عَدُوٍّ لَّكُمْ وَهُوَ مْؤْمِنٌ فَتَحْرِيرُ رَقَبَةٍ مُّؤْمِنَةٍ وَإِن كَانَ مِن قَوْمٍ بَيْنَكُمْ وَبَيْنَهُمْ مِّيثَاقٌ فَدِيَةٌ مُّسَلَّمَةٌ إِلَى أَهْلِهِ وَتَحْرِيرُ رَقَبَةٍ مُّؤْمِنَةً فَمَن لَّمْ يَجِدْ فَصِيَامُ شَهْرَيْنِ مُتَتَابِعَيْنِ تَوْبَةً مِّنَ اللّهِ وَكَانَ اللّهُ عَلِيمًا حَكِيمًا

4-93.だが信者を故意に殺害した者は、その応報は地獄で、かれは永遠にその中に住むであろう。アッラーは怒ってかれを見はなされ、厳しい懲罰を備えられる。
وَمَن يَقْتُلْ مُؤْمِنًا مُّتَعَمِّدًا فَجَزَآؤُهُ جَهَنَّمُ خَالِدًا فِيهَا وَغَضِبَ اللّهُ عَلَيْهِ وَلَعَنَهُ وَأَعَدَّ لَهُ عَذَابًا عَظِيمًا

 これもアッラーの敵との戦い。

2-217.かれらは聖月中に戦争することに就いて、あなたに問うであろう。言ってやるがいい。「聖月中に戦うことは重大事である。だがアッラーの道に近付くのを妨げ、かれを否定し、また聖なるマスジド〔アル・マスジド・ル・ハラーム〕を汚し、そこ(の聖域)に住む者を追放することは、アッラーの御目にはもっと重大事である。迫害は、殺害より遙かに悪い。」かれらはもし出来るなら、あなたがたを信仰から背かせるまで戦いを止めないであろう。あなたがたの中で、もし信仰に背き、不信心者のままで死ぬ者があれば、このような者は、現世でも来世でも、その行いは徒となる。またこれらの者は、業火の住人である。かれらは永遠にその中に住む。
يَسْأَلُونَكَ عَنِ الشَّهْرِ الْحَرَامِ قِتَالٍ فِيهِ قُلْ قِتَالٌ فِيهِ كَبِيرٌ وَصَدٌّ عَن سَبِيلِ اللّهِ وَكُفْرٌ بِهِ وَالْمَسْجِدِ الْحَرَامِ وَإِخْرَاجُ أَهْلِهِ مِنْهُ أَكْبَرُ عِندَ اللّهِ وَالْفِتْنَةُ أَكْبَرُ مِنَ الْقَتْلِ وَلاَ يَزَالُونَ يُقَاتِلُونَكُمْ حَتَّىَ يَرُدُّوكُمْ عَن دِينِكُمْ إِنِ اسْتَطَاعُواْ وَمَن يَرْتَدِدْ مِنكُمْ عَن دِينِهِ فَيَمُتْ وَهُوَ كَافِرٌ فَأُوْلَـئِكَ حَبِطَتْ أَعْمَالُهُمْ فِي الدُّنْيَا وَالآخِرَةِ وَأُوْلَـئِكَ أَصْحَابُ النَّارِ هُمْ فِيهَا خَالِدُونَ

 ざっと見渡した中で、唯一はっきりと「敵討ち」な内容なのは、ここでした(他にもあるかもしれません)。個人レベルでの敵討ちについての記述です。

2-178.信仰する者よ、あなたがたには殺害に対する報復が定められた。自由人には自由人、奴隷には奴隷、婦人には婦人と。だがかれ(加害者)に、(被害者の)兄弟から軽減の申し出があった場合は、(加害者は)誠意をもって丁重に弁償しなさい。これはあなたがたへの主からの(報復の)緩和であり、慈悲である。それで今後これに違反する者は、痛ましい懲罰を受けるであろう。
يَا أَيُّهَا الَّذِينَ آمَنُواْ كُتِبَ عَلَيْكُمُ الْقِصَاصُ فِي الْقَتْلَى الْحُرُّ بِالْحُرِّ وَالْعَبْدُ بِالْعَبْدِ وَالأُنثَى بِالأُنثَى فَمَنْ عُفِيَ لَهُ مِنْ أَخِيهِ شَيْءٌ فَاتِّبَاعٌ بِالْمَعْرُوفِ وَأَدَاء إِلَيْهِ بِإِحْسَانٍ ذَلِكَ تَخْفِيفٌ مِّن رَّبِّكُمْ وَرَحْمَةٌ فَمَنِ اعْتَدَى بَعْدَ ذَلِكَ فَلَهُ عَذَابٌ أَلِيمٌ

 以下は、報復の権利について言及された箇所。

17-33.正当な理由による以外は、アッラーが尊いものとされた生命を奪ってはならない。誰でも不当に殺害されたならば、われはその相続者に賠償または報復を求める権利を与える。殺害に関して法を越えさせてはならない。本当にかれは(法によって)救護されているのである。
وَلاَ تَقْتُلُواْ النَّفْسَ الَّتِي حَرَّمَ اللّهُ إِلاَّ بِالحَقِّ وَمَن قُتِلَ مَظْلُومًا فَقَدْ جَعَلْنَا لِوَلِيِّهِ سُلْطَانًا فَلاَ يُسْرِف فِّي الْقَتْلِ إِنَّهُ كَانَ مَنْصُورًا

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