Categories: ノコリモノ

覚えているのはネズミの背中ばかり

太い井戸の中をただただなす術もなく落ちていて、鉄の棒かなにかをガッと壁に刺してガリガリガリッと抗い、一瞬壁際のネズミが跳ねるのが目に映ったりするけれど、すぐに棒がボキンと折れてまた落ちる。
このガリガリした跡が作品で、後のことは目の前にあっても一切見えない、見えていて見えていない。ガリガリ跡も既にはるか上空で己の手を離れた。覚えているのはネズミの背中ばかり。

kharuuf

Share
Published by
kharuuf

Recent Posts

カミユ『ペスト』

 カミユの『ペスト』を漫画化し…

1年 ago

私信です

このポストはまったくの私信です…

4年 ago

不可知論のギリギリ一歩手前で永遠に宙吊りにされた

何が正解かわからないから人はパ…

4年 ago

体験の墓石

写真は多くの場合、最初は体験と…

4年 ago

過去が圧倒的にわたしたちを飲み込んでいる

過去を肯定する、という言い方は…

4年 ago