脳のなかの幽霊 V.S.ラマチャンドラン 山下篤子訳 角川書店 1999-08 |
遅ればせながら読んでみました、ラマチャンドランの『脳の中の幽霊』。
インド出身の神経科学者による「脳のイロイロ話」系の本で、オリバー・サックスが好きな人なら、とりえあず読み物として大変楽しめます。というか、「オリバー・サックスとラマチャンドランは同一人物」という説があっても騙されそうなくらい、ノリが一緒です(笑)。別段、脳神経科学についての予備知識は要求されませんし、読んでもそんなに深く理解できるわけではありませんが、ひとつ一つのエピソードはわかるし問題ありません。特に幻肢についての部分は、ラマチャンドランを有名にした研究だけあって、なかなかエキサイティング。
一方、いちいちフロイトを引き合いに出しているのは鼻につく。彼がどれほどのフロイト読者なのか存じませんが、比較するようなお話ではないし、敢えて取り上げるだけ安っぽい印象になっています。たぶん彼は、フロイトが現代的に評価されるコンテキストというものをよく理解していないのではないでしょうか。
この手の本としては、個人的にはオリバー・サックスの『火星の人類学者』が一押しで、これ一冊でお腹いっぱいのように思っています。『火星の人類学者』は名著です。