もう結構前になってしまいましたが、東京フィルメックスでイスラエルのアリ・フォルマン監督によるアニメ映画「バシールとワルツを Waltz with Bashir」を観てきました。
1982年のサブラ・シャティーラのパレスチナ難民虐殺(マロン派キリスト教系民兵組織ファランヘ党が、党首バシールの暗殺の報復として、難民キャンプを襲撃し虐殺を繰り広げたもの)をイスラエル兵士の視点から描いたもので、登場人物は実在人物らしいですが、アニメーション作品です。イスラエルはこの虐殺を「黙認」したとも言われ、微妙なポジションにありました。パレスチナについてイスラエルの立場から描けるのはこれが限界なのか、と穿った見方をすることもできますが、参戦した一兵士のリアリティという点で、立場の如何を越えて空寒い恐ろしさの伝わってくる作品でした。
反戦メッセージといったこと以前に、アニメーションと音楽が素晴らしく美しい。
特に照明弾がゆっくりと落ちてくる中、川の中を男たちが歩く風景がとても印象的でした。
監督の意図とは離れるかもしれませんが、アラブ・イスラエル関係といった要素を一度脇に避けて見た方が楽しめる気がします。そもそも、この作品をアラブ人(といっても色々ですが)が見てどんな感慨を抱くのか、疑問なところもありますし・・。
ほとんどの部分がヘブライ語、少しだけ英語とアラビア語の部分があります。レバノンの風景では看板などはちゃんとアラビア語で描かれています。
追記20100303:
現在「戦場でワルツを」という邦題で上映されているようです。
戦場でワルツを 完全版 [DVD] ワーナー・ホーム・ビデオ 2010-05-12 |