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どっちでもいいもの

 エジプト方言の割と有名な特徴の一つとして、قがءで発音される、というのがあります。同時にالقاهرةとかالقرآنはقのまま、というのも知られています。前にアーミーヤで書かれたしょうもない本にسأفةという単語があったので「何だ?」と思ったらثقافةのことでした。もちろん、これをسأفةと発音したら「変」で、その変さを敢えて狙ったものです。
 このように、必ずقで読まれるもの、必ずءで読まれるものがある一方で、「どっちでもいい」という領域があります。
 例えばقدرةは、直接の個人的知り合いの中でもقで読む人とءで発音する人がいて、聞いてみると「どっちでもいい」と言います。قصةなんかもそうです。
 強いて言えばء読みを徹底する方が「べらんめえ調」にコテコテで、知る範囲のキャラによる使い分けを見ているとそういう印象があるのですが、厳密なものではありません。ちなみに、エジプト人は自分の言葉の癖とか方言とかについて、特に恥じたり誇ったりする様子はないです。以前に「日本だと地方の人が東京に出てきて方言を隠すことがある」と言うと「なんでだ」「変なの」と怪訝そうな顔をされました。
 この手の「どっちでもいい」は、別にアラビア語に限らずあらゆる言語に存在するものですが、エジプト人は特に「絶対の正当」を決めようという性向が弱いように感じます。そもそもアーミーヤに正書法がありませんし、「おおきい」でも「おーきい」でも何でもええやないけ、というノリが濃厚です。
 未来を表す接頭辞もحとهがあって、意味上の差異や地域・社会階層・性別による違いがないものなのか、随分色んな人に聞いたのですが、「別にない」としか言われませんでした。多分言語学的に研究している人がいると思うので、実はあるのだったら教えて欲しいです。唯一「どっちでもいいけど、個人的にはهを使う。حは喉が疲れるから」と、物凄いどうでもいい理由を教えてくれた人がいました。

kharuuf

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