ジョークでわかるイスラム社会 早坂 隆 有楽出版社 2004-06 |
アラブ・イスラームを巡るジョーク集と、イスラーム概説。
概説部分は多少なりともイスラームに関心を持っているものにとっては退屈だけれど、ふんだんに収められたジョークはどれも秀逸。
個人的に気に入ったものを一つご紹介しておきます。
ある村にいたずら好きで有名な兄弟がいた。何か問題が起きると、まっさきにこの兄弟が疑われていた。弟はまだ八歳、兄は十歳だった。
ほとほと困り果てた母親は、どんな悪童でも改心させるというイスラームの先生のところに二人を預けることにした。先生は兄弟を一人ずつよこすように言った。
まず弟が先生の元を訪れると、先生はこう尋ねた。
「君はアッラーのことを知っているね?」
弟は口を結んだまま答えようとしなかった。
「知っているだろう? アッラーはどこにいるのか言ってみなさい」
弟は答えない。先生は少し苛立って言った。
「君はアッラーを知らないとでも言うのかね? そんなことはないだろう?」
弟はとうとう泣き出して、走って家に帰ってしまった。
心配した兄が弟に声をかけた。
「どうしたんだ? 何があったんだ?」
「大変なことになっっちゃったよ」
「何が起きたんだ?」
「アッラーがいなくなっちゃったみたいなんだ。それで、また僕たちが疑われてる!」