断食中にどうしても一時間ほど時間を潰さなければならなくなり、仕方なくベローチェに入って、飲みもしないコーヒーを頼んでクルアーンを読んでいた。
途中、貧乏そうな身なりの汚い若者が入ってきて、レジで「すいません、水もらっていいでしょうか」と尋ね、一気に三杯ほど飲み干して、丁重に礼を言って立ち去っていった。
「このコーヒーも飲んでいって下さい!」と咄嗟に言えなかった自分が非常に恥ずかしい。そういう時の無駄な行動力には割と自信があったのだけれど、まったく修行が足りないと思い知らされた。
それにしても、水を与えたベローチェは実に素晴らしい。
雰囲気的に断るわけにもいかなかったのだろうけれど、乾いた旅人に水をやれないような人間は砂漠に捨ててしまうべきだ。
斎戒しているとよくわかるが、水は本当に大切なもので、しかも一人の人間に必要な水というのは、実にわずかなものだ。水と最低限の食べ物は、たとえ敵であっても無条件で与えなければならない。話もシバキ合いもそれからだ。
ベローチェと言えば、オッサンくさい荒んだイメージだったけど(ごめん)、断然見なおした。
ベローチェのバイトよ、お前は旅人の心を分かっている。