بالورقة والقلم

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 以前に紹介したمصر فيها حاجة حلوةと同じく、映画عسل إسودの挿入歌となっているبالورقة والقلمという歌です。

بالورقة والقلم

خدتينى 100 ألم
أنا شفت فيكي مرمطة وعرفت مين اللى اتظلم

ليه اللي جايلك أجنبي
عارفة عليه تطبطبي
وتركِّبي وش الخشب وعلى اللي منك تقلبي

عارفة سواد العسل
أهو ده اللي حالك ليه وصل
إزاي قوليلي مكمِّلة وكل ده فيكي حصل

يا بلد معاندة نفسها
يا كل حاجة وعكسها
إزاي وأنا صبري انتهى لسة بشوف فيكي أمل

طارداك وهي بتحضنك
وهو ده اللي يجنّنك
بلد ماتعرف لو ساكنها وإلا هي بتسكنك

بتسرقك وتسلِّفك
ظالماك وبرضه بتنصفك
إزاي في حضنك ملمومين وإنتي على حالك كده

紙とペンで1
あなた2は酷い痛みを与えた
あなたには侮辱があり 虐げられた人々がいる

やってきた外国人には
優しくすることができるのに
わたしには酷い扱いをする

蜂蜜の黒さを知っている3
あなたが至り着いたこの状態だ
あなたの元で起こったこのすべてを、どうしてまだ続けようというのか

ああ頑迷な国よ
すべてのものと、その反対のものがある4
忍耐も尽き果てて どうしてわたしは あなたに希望を見ているのだろう

(人を)追い払いながら抱きしめる
心をかき乱す
この国は そこに住む国か あるいは国が(人の心に)住んでいるのか5

盗みながら金を貸してくれる
迫害しながら公正に扱う
こんな状態なのに どうしてあなたの元に抱かれるものたちがいるのか

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 胸が締め付けられるような歌です。わたしは所詮外国人ではありますが、非常に的確にエジプト人とエジプトの関係、エジプトに対する想いを表しています。
 この歌で語られている「エジプトによるエジプト人冷遇」、裏を返せば「外国人のディズニーランドとしてのエジプト」という問題は、外国人としてのわたしたちこそ、改めて直視しなければいけないことです。昨今では日本でも排外主義的な勢力が目につきますが、もしこの国がエジプトと同じような境遇にあったら、と考えると、エジプト人の辛抱強さは寛大さは(外国人訪問者が皆経験するボッタクリや無秩序を差し引いいても)評価されて然るべきでしょう。別に「ヘラヘラ観光なんか行くな」と言いたいのではなく、むしろ覚悟を持った上で全力で遊んできて欲しいのですが。特に、革命後の混乱で観光客の減っている今こそ、エジプト人好きは多いに遊びに行ってお金を落としてきて頂きたいです。

 この歌が使われている映画「アサル・エスワド(黒い蜂蜜)」をやっと見たのですが、もう本当に素晴らしい作品でした。もう五回くらい見ました。
 幼少時に両親に連れられてアメリカに移住したアメリカ国籍を持つエジプト人が、二十年ぶりに憧れの祖国エジプトに帰り、様々なドタバタに巻き込まれる、という、笑いあり涙ありのエンターテイメントですが、同時にエジプトの社会問題を抉出する名作です。ちなみに、この主演のアフマド・ヘルミーは現代エジプト映画界の若手名優の一人ですが、イケメンなのにコメディー俳優で、この人の出演作はいつも面白いです。テレビ出演時などを見ると、普段の振る舞いもカッコ良くてオシャレなのに「オモロイ兄ちゃん」で、とても好感が持てます。
 あんまり素晴らしいので、需要があれば日本語字幕を付けてみようかと考えています。正直、聞き取りに自信のない箇所もあるので、もし勝手ファンサブができても、九割方くらいの正確さで勘弁してあげて下さい。主人公の台詞は非常に明瞭なのですが、ロークラスのおっちゃんとかヤクザまがいの警官の台詞が難しいんですよね。いや、これは別に映画だけの話ではなく、普通に道で話す時にも経験する困難ですが・・。

  1. 「紙とペンで」は「勘定して、計算づくで」の意味。損得勘定の上で、エジプトがエジプト人を冷遇していることを指す。同時に「書類上の理由で」という意味や「運命」を匂わせているところもある []
  2. エジプトのこと。女性二人称で話しかけられている []
  3. 映画のタイトルも「黒い蜂蜜」だが、これは、一つのものの中に良いところと悪いところが併在している様を表す。蜂蜜は素敵な食べ物の象徴だが、色は黒い。性格の悪い女性のこともこう言うことがある []
  4. あらゆる反対物と矛盾がある、の意 []
  5. 人が国に住むのか、国が人に住むのか、という美しい表現 []