吸玉大臣が保健相に代わる?

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 最近のエジプトの風刺漫画です。

 「ヒガーマ大臣(元保健相)」とあり、手に持っているのは歯ブラシとスィワークという伝統的な歯の清掃具です。ヒガーマは吸玉療法で、これも伝統的な民間療法。下には「癒されるはアッラー」という文句が書かれています。
 エジプトでは現在、革命の主たる担い手であった青年層がまとまった政治勢力を形成できていない一方、ムスリム同胞団の結成した自由公正党が伸長しつつあり、これを警戒し皮肉ったのがこの漫画です。「ムスリム同胞団が政権をとったら、極端なイスラーム的政策を行って大変なことになるぞ」という意味です。もちろん、いくらなんでも歯ブラシ禁止なんてあり得ないわけですが。

 大衆革命が成し遂げられても、その担い手たちは元々政治的にまとまっていたわけではありませんし、革命前からあった第三勢力のような人々がいつの間にか掠めとって、覇を握ってしまう、ということがあります。イラン革命なんかも割と似た感じだったと思います(と言ったら怒られるのでしょうか)。
 同胞団はもちろん、一定の大衆的支持を得ていますし、草の根ではなかなか頑張っているわけですが、エジプト革命については、当初デモへの参加を禁じていたくらいなので1、大した役割は担っていません。ただ、組織力については実績がありますから、結果として現在まとまっている最大勢力になりつつあるように見えます。ただ実際のところ、革命前に公正な選挙が行われていたとしても同胞団が単独過半数を取れたとは思えませんし、現在選挙を行っても、「連立の一員」くらいが関の山なのではないでしょうか。問題は、大衆の大多数を占める「それなりに真面目なムスリムだが、過激派ではなく、極端なイスラーム政権は望んでいない」「原則としては世俗的だが、イスラーム的統治が反映された政治を望む」人々を代表する勢力が、きちんとした体制を持つまでには育っていない、ということでしょう。

 昨日の金曜日にも「第二の怒りの金曜日」なるデモが行われたようです。体制内に残る旧体制分子の排除を要求するものとのことで、同胞団が参加を控えるよう呼びかける一方、軍は不介入を宣言したと聞きました。その後ニュースも聞かないので、とりあえず穏便には済んだのではないかと思いますが。

  1. 末端レベルでは個人の資格で相当加わっていたらしい []