エジプト革命後のデモ・スローガン、喚いてみないと分からないこと

 中東の一連の革命ニュースでは、リビア、シリア、バハレーンが話題の中心になり、エジプトやチュニジアは「一段落」とあまり話題にならなくなりましたが、依然革命は「進行中」です。
 金曜日には依然としてデモが続けられていて、いくつかのデモは「給料上げろ」等の即物的な要求を掲げているだけなのですが、先週金曜日に行われたデモの文句が、なかなか気がきいていました。
 革命の時のスローガンが、
الشعب يريد إسقاط النظام
「民衆は体制転覆を望んでいる」というものだったのですが、先週のフレーズは
الشعب عايز يعرف هو إيه النظام
 だったというのです。
 إيه النظامは直訳すれば「秩序は何か」とでもなりますが、「調子はどう?」「どういう塩梅よ」という口語表現です。二つのフレーズはどちらもالنظام秩序という言葉が使われていますが(「体制転覆」の「体制」)、後者は慣用表現の一部で、意味が違います。
 新しいフレーズは「民衆はどうなっているのか知りたい」という意味で、つまり「革命の要求事項として掲げられたあの件、今どうなってるんよ? やるやる言っといてちっとも進んどらんやんけ!」ということです。
 一応は成し遂げられた革命の後、こうしてギャーギャー監視が行われるのは、大変結構なことでしょう。まぁあの人達はいつでもどこでも言いたいことは全部言い切るので、そういう性質がプラスに働いているのかと思います。

 翻って日本について、こんな記事がありました。
外国人記者が見た「この国のメンタリティ」 「優しすぎる日本人へ」  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

「仕方がない」という言葉を胸に、ピンチのときこそひとつになろうとする日本人の姿は、外国人記者の心を打ち、世界中で驚きと賞賛を呼んでいるのである。
 しかし、一方で日本人は地震で起こったあらゆる物事を「仕方がない」の一言で片づけようとしてはいまいか—外国人記者の口からは、そんな鋭い意見も聞かれた。前出・パリー氏はこう言う。
「避難所では皆ギリギリの生活をしている。被災者は皆頑張っているというのに、(物資もロクに届けられないとは)政府はなにをしているのか、と思うときがあった。被災地の人はもっと声を上げて叫ぶべきではないか。これがイギリス人だったら、政府の注意を引くためにもっと暴れていると思います。ここにも日本人の『仕方がない』精神が表れている気がしますね」

 こういう危機にあって、一般的な性向としては、日本人は騒がず喚かず淡々と耐え忍ぶところがあるようですが(単に怒っても疲れるだけなので諦めているのだと思いますが)、喚けば多少なりとも意味のあるところでも喚かない、というもののようです。
 同じ性質の二つの局面かと思うので、良いとか悪いとか一概には言えないでしょうが、エジプトのことを考えると、つくづく色んなところが正反対で興味深いです。
 エジプト人も、些末な日常時の要求についてはしつこく主張する一方、政治的要求については、革命前は非常にネガティヴでした。それこそ正に「仕方ない」で、本当に言ってもどうにもならなかったですし、下手をすると暗いところに連れて行かれて帰って来れなかったのですから、黙るのも当たり前でしょう。それが今では相当に前向きになって、「政府だろうが何だろうが、言うこと言わずに死ねるか、やればできる」という勢いが付いたようです。この辺は見習って良いのではないかと思います。
 喚いても無駄なことは沢山ありますし、喚くと疲れるし、喚いているヤツがいると鬱陶しいですが、喚き続けると多少は動くことも世の中にはありますし、喚いてみないと分からない、ということも沢山あります。時にはやかましく騒いで疎ましがられるくらいやってもいいのじゃないすかね。

 エジプトのことに戻ると、現在政党としてまとまった力を持っているのは、やはり旧国民党の国民民主党とムスリム同胞団のようです。多くの革命で、実際に革命を成し遂げた勢力が政権打倒後のドタバタで排除されてしまう、という現象が見られますが、青年改革運動派はなかなかまとまった勢力を作ることができず、一方で大したことをやっていなかったイフワーンがここぞとばかりに頑張っているようです。
 同胞団そのものは良くも悪くも穏健派ですが、少なからぬ人々の予想した通り、一部の過激なイスラーム主義者グループが「遺跡を爆破せよ」「観光業そのものがハラームだ」と威勢のよいことを叫んでいるとのこと。個人的には爆破したければガンガン爆破したらいいと思うのですが、エジプト経済にとっては損失どころの騒ぎではありませんし、国民的支持は全く得られていないでしょう。
 過激イスラーム主義者がエジプトで覇権を握る、という事態は、余程の無茶をしない限りあり得ないですし、穏健派の同胞団でも、単独過半数を取ることは厳しいでしょう。一方で国民党にはほとんどの国民が嫌気がさしていて、青年改革運動派は今ひとつまとまらない、ということで、国民は支持する対象が定まらず宙ぶらりんのようです。
 このまま選挙が行われて、国民党の成れの果てが第一党、グダグダの同胞団が最大野党、という、革命前の焼き直しみたいな風景が再現されるような気がしてならないのですが・・。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする